漫画『NANA』において、タクミとレイラの関係性は、恋愛とも友情とも家族愛とも言い切れない、曖昧で深い絆として描かれています。
幼い頃から共に歩んできた2人が、なぜ最後まで一線を越えることなく、心だけでつながっていたのか──
その答えは、作中の繊細な心理描写の中に隠されています。
この記事では、タクミとレイラの関係に潜む「愛」「逃避」「依存」「尊敬」といった複雑な感情を深く掘り下げ、読者の心をかき乱す聖域のような関係の真意に迫ります。

2人の関係が明確に描かれなかった理由、シンとの対比、未来への示唆まで。タクミとレイラをめぐる物語を、徹底考察します。
\ 2026年矢沢あいツインウエハース /


タクミとレイラは愛か逃避か?その境界線を考察
幼馴染という距離感からレイラを聖域にしてしまったタクミ
タクミとレイラは幼い頃からの付き合いであり、バンド活動を共にする中で強い信頼関係を築いてきました。
しかし、タクミにとってレイラはどこか触れてはならないものという意識が強く、恋愛対象というよりも精神的な守るべき存在として捉えていた節があります。
それは、レイラの繊細さを知るがゆえに、強引な自分の性質が彼女を傷つけてしまうという恐れがあったのかもしれません。
タクミがレイラを「神聖視」しながらも恋愛関係に進めなかった心理には、タクミ自身の歪んだ価値観・罪悪感・支配欲と恐れの混在があります。
次に、心理学・キャラクター描写・物語全体の構造から詳しく考察します。
タクミがレイラに欲望をぶつけられないのはなぜか?
これは、自己嫌悪と支配欲のぶつかり合いです。
- タクミは「自分のような人間がレイラを愛していいのか?」という自己否定感を強く持っていました。
- 同時に、恋愛では「支配・所有・性」で自分を確認するタイプですが、レイラにそれをすると「傷つけてしまう」とわかっていた。
- つまり、自分の愛し方ではレイラを幸せにできないと悟っていたのです。



その選択が最終的に、ハチのことは幸せにできたの?自分もレイラも幸せになれる選択だったの?
レイラを選べなかったのは責任からの逃避「守るべきもの」としてのレイラ像(聖域視)
- タクミはレイラを「幼い頃から守ってきた存在」として強く意識しており、自分の欲望や破壊性から彼女を遠ざけていました。
- レイラは、無垢で脆く、繊細で感情的。タクミのような「支配的で感情のぶつけ合いが激しいタイプ」とは、根本的に合わないと本人もどこかで感じていた可能性があります。
- だからこそ、「壊したくないからこそ手を出せない」というジレンマに苦しんでいたのです。
汚したくない。壊したくない。
だから距離を取るしかなかった。
タクミはなぜハチと結婚した?レイラを選べなかった理由は責任からの逃避
ハチとの関係では「責任を取る」「家庭を築く」という社会的な役割を果たした。
しかし、レイラを選ぶことは、感情に向き合う選択であり、逃げ場がない愛だった。
タクミは仕事や育児という“役割”で自分を正当化する方が楽だった可能性が高いです。
タクミは、ハチとの関係で「妻のいる男」になりました。
ハチのことは好きではあったし、これまでのセフレの中ではお気に入りだったと思います。
妊娠したタイミングも、お気に入りのセフレの一人のハチがノブと付き合いだした頃。
「お気に入りのおもちゃを取られて嫉妬する子供のよう」と京介が表現していたような感情はあったはずです。
結婚という大きな決断をするきっかけに愛情といえるかはわからないけどハチのことを気に入っていた、愛のようなものは感じていたこともあったかもしれません。
また、それと同時にレイラの自分への気持ちを止めるための手段の1つだったという可能性も捨てきれません。
それは、これ以上レイラからの愛を拒絶する理性を保つ自信がなかったのかもしれません。
レイラはタクミに恋をしたのか、それとも心の拠り所か?
レイラは、タクミに対して一途な想いを抱いていたように描かれています。
しかしその感情は、当初は恋愛というよりも“家族のような愛”や“父性への執着”に近いものだったと考えられます。
タクミとハチが結婚した後も、レイラはその距離を保ちながらも近くに居続けたことで、「一線を越えない関係」に自分を縛り続けていたように感じられます。
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シンとレイラが絡む愛と絆の対比
レイラと深く繋がっていたもう一人の人物がシンです。
シンは年下ながらも、レイラの内面を見ようと努力し、無償の優しさで包み込もうとしていました。
一方、タクミはレイラを守る対象として距離を保ち、近づくことで関係が壊れることを恐れていました。
この違いが、レイラの心の揺れをさらに複雑なものにしていたのではないでしょうか。
タクミとレイラじゃ愛か逃避か?まとめ
タクミとレイラの関係は、明確な「恋人」でも「家族」でもなく、 言葉で定義しきれない曖昧な関係でした。
それでも2人は、お互いの心の穴を埋め合っていた。
名前のない関係。 だけど、そこに確かな情と執着があったことだけは間違いありません。
愛していたのかもしれない。でも近づけば壊れるのが分かっていた。
その葛藤こそが、2人の物語だったのかもしれません。

